
消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

消防士の訓練は、どんなことをしているの?

火災の訓練は体力的に厳しい?

消防士の服装って暑くないの?

火災に行って熱中症にならない?
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、訓練のエピソードから消防士のやりがいがざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

消防士も熱中症になる
消防士は、火災現場で熱中症になることがあります。
火災現場で着ている防火服は、防火性能があり、気密性があります。
気密性があるということは、体温を外に逃がしません。
火災現場の活動は、重い個人装備を着て、重い道具を運びます。
筋力を使うため、体温は上昇します。
さらに…もっと熱い環境の中(燃えている建物)に入って火を消し、人を助けなければなりません。
体温はさらに上昇していきます。
消防士にとって、熱中症にならないようにすることは大きな課題です。
そこで、様々な対策がとられています。
水分補給ができる体制を早期に確立したり…
冷却ベストを着て、体温の上昇を防いだり…
他の部隊が応援にきて、ローテーションしたり… など
経験上、熱中症にならないために一番大切なことがあります。
それは、次に話すエピソードになります。
夏を迎える前に
消防士にとって、夏を迎える前に行う大事な訓練があります。
その名も「暑熱順化トレーニング」
簡単に言えば、「夏を迎える前に暑さに慣れておこう」
という訓練です。
トレーニングの内容は…
火災現場の個人装備を着て、30分間のランニングです。
暑さに慣れることが「テーマ」であるため、各自のペースでランニングします。
《火災現場の個人装備》
・ 防火服
⇒ 防火性能がある生地で作られ、腰に命綱が付けられる安全ベルトが着いています。
・ 防火ズボン
⇒ 防火性能がある生地で作られ、膝を保護するクッションが入っています。
・ 長靴
⇒ 足裏に鉄板、つま先に補強材が入っていて、釘の踏み抜きや落下物から足を保護します。
・ 防火手袋
⇒ 防火性能がある生地で作られていて、手のひらは滑り止めが付いています。
・ 防火ヘルメット
⇒ 防火性能を有していて、顔面を保護するシースドが付いています。また、首回りを熱から保護する「しころ」がついています。
・ 空気呼吸器
⇒ ボンベの中の空気を面体(顔を覆うマスク)を通して吸うことができます。

重さは、合計で19㎏になります。
手で持つ重さではなく、身に付ける重さなため、徐々に体力を付けていけば慣れていきますよ。
それでは、訓練のエピソードを見ていきましょう。
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空気呼吸器を背負って出発
私が中隊長の頃に訓練をしたエピソードです。
6月中旬の午後で、気温は25℃くらい。
中隊のメンバー8名で暑熱順化トレーニングをします。
メンバーは、30歳前後で体力的にも差ほど変わりがないと考え、みんな一緒にランニングすることにしました。
みんなで、火災現場の個人装備を着ます。
最後に空気呼吸器を背負って、トレーニングの開始です。

訓練中であるとはいえ、火災の指令が入れば直ぐに出場します。
火災現場で各人が最良のパフォーマンスを発揮しなければならないため、事前の準備がかかせまん。
例えば、準備運動を入念に行う…水分がすぐに補給できるよう体制を整える…などです。
自身の体調と向き合う
私は、中隊長でこの訓練の責任者でもあります。
みんなの体調や調子が分かるよう、最後尾でランニングをします。
先頭は、小隊長。
ペースは、ゆっくり。
会話ができるぐらいです。
はじめの5分間…
暑さを感じるというよりは、個人装備の重さに慣れる時間帯。
足腰にどれだけの負荷がかかっているのか確認しながら走ります。
次の5分間(合計タイム10分)…
みんな少し慣れてきて、和やかムード。
笑いながらお互いの調子を確かめ合っています。
「調子良さそうだな!」「いやいや、そんなことないっすよ😃」って感じです。
次の5分間(合計タイム15分)…
体は慣れている感覚だが、汗はかなり出てきている。
顔から出る汗を拭き取る仕草が目立ってきた。

汗を拭き取るといっても、タオルを持っている訳でもないので、防火服の袖で汗を拭っています。
ここで、小隊長が言う。
「階段の登り降りを始めます」
「了解」みんな答える。
消防署の屋外階段を3階まで登って、降りるを繰り返す。
歩くペースでじっくり階段を踏みしめる。
次の5分間(合計タイム20分)…
階段の登り降りは、7回くらい繰り返し終えて、ランニングに切り替える。
みんなの会話は止まった。
体温もだいぶ上がってきているのが分かる。
それぞれが自身の調子に向き合う時間帯だ。
次の5分間(合計タイム25分)…
最後尾を走る私。
走っているみんなを見ていると、少しペースを落としている隊員がいる。
私は、先頭を走る小隊長に言う。
「ここから、列を崩して各自のペースで走ろう」
小隊長が言う。
「了解。私もペースを落とします。」
それに合わせてみんなもペースを落とす。
ただ、誰ひとり列を崩そうとしない。
みんな一緒に最後まで走りたいという意志を感じる。
私も最後尾でみんなと一緒に走ることにした。
住民の声援が嬉しい
次の5分間(合計タイム30分)…
最後の5分間。
体温がかなり上昇しているのを感じる。
不快な暑さ。
みんなの顔が赤く、大量の汗をかいている。
みんなが自身の体調と向き合っている時…
「がんばれ!がんばれ!」という声が聞こえる。
子どもが声援を送ってくれていたのだ。
地元の家族が消防署の前を通るとき、消防士が火災現場の服装で走っているのを見て、足を止めてくれていたのだ。
この辛い時間帯に声援は有り難かった。
さらに何人もの人が足を止めて声援を送ってくれている。
みんなも住民に答える。
「ありがとうございます!」
声援のお陰もあって、みんな最後まで列を崩さず走ることができた。
みんながにこやかだった。
積み重ねが大切
夏を迎える前にこのトレーニングを4回から5回行います。
熱中症を防ぐためは、このトレーニングは大切です。
さらに踏み込んで話をすると…
年間を通してトレーニングすることが大切です。
最近の研究で暑熱順化トレーニングは、軽装で行っても効果があるそうです。
ということは…
消防士には、日々の有酸素運動などのトレーニングが必要になってくるということです。
ハードなトレーニングにこだわるのではなく、継続的にできるトレーニングを積み重ねることが大切です。
そうすれば、熱中症になりにくい体ができてくるはずです。

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