訓練エピソード②《熱中症にならないために》

学生
学生

消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

転職考え中
転職考え中

消防士の訓練は、どんなことをしているの?

学生
学生

火災の訓練は体力的に厳しい?

転職考え中
転職考え中

消防士の服装って暑くないの?

学生
学生

火災に行って熱中症にならない?

と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?

この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。

最後まで読んでいただけたら、訓練のエピソードから消防士のやりがいがざっくり分かると思います。

ちなみに私は、

バリー
バリー

消防士は「やりがい」があって最高!

プライベートも充実させてくれて感謝!

って想っている幸せものです。

消防士になりたい興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

消防士も熱中症になる


消防士は、火災現場で熱中症になることがあります。

火災現場で着ている防火服は、防火性能があり、気密性があります。

気密性があるということは、体温を外に逃がしません。

火災現場の活動は、重い個人装備を着て、重い道具を運びます。

筋力を使うため、体温は上昇します。

さらに…もっと熱い環境の中(燃えている建物)に入って火を消し、人を助けなければなりません。

体温はさらに上昇していきます。

消防士にとって、熱中症にならないようにすることは大きな課題です。

そこで、様々な対策がとられています。

水分補給ができる体制を早期に確立したり…

冷却ベストを着て、体温の上昇を防いだり…

他の部隊が応援にきて、ローテーションしたり… など

経験上、熱中症にならないために一番大切なことがあります。

それは、次に話すエピソードになります。

夏を迎える前に

消防士にとって、夏を迎える前に行う大事な訓練があります。

その名も「暑熱順化トレーニング」

簡単に言えば、「夏を迎える前に暑さに慣れておこう」

という訓練です。

トレーニングの内容は…

火災現場の個人装備を着て、30分間のランニングです。

暑さに慣れることが「テーマ」であるため、各自のペースでランニングします。

《火災現場の個人装備》

・ 防火服
 ⇒ 防火性能がある生地で作られ、腰に命綱が付けられる安全ベルトが着いています。

・ 防火ズボン
 ⇒ 防火性能がある生地で作られ、膝を保護するクッションが入っています。

・ 長靴
 ⇒ 足裏に鉄板、つま先に補強材が入っていて、釘の踏み抜きや落下物から足を保護します。

・ 防火手袋
 ⇒ 防火性能がある生地で作られていて、手のひらは滑り止めが付いています。

・ 防火ヘルメット
 ⇒ 防火性能を有していて、顔面を保護するシースドが付いています。また、首回りを熱から保護する「しころ」がついています。

・ 空気呼吸器
 ⇒ ボンベの中の空気を面体(顔を覆うマスク)を通して吸うことができます。

バリー
バリー

重さは、合計で19㎏になります。

手で持つ重さではなく、身に付ける重さなため、徐々に体力を付けていけば慣れていきますよ。

それでは、訓練のエピソードを見ていきましょう。

消防署図鑑 [ 梅澤真一 ]

価格:4290円
(2024/12/22 18:47時点)
感想(0件)

空気呼吸器を背負って出発


私が中隊長の頃に訓練をしたエピソードです。

6月中旬の午後で、気温は25℃くらい。

中隊のメンバー8名で暑熱順化トレーニングをします。

メンバーは、30歳前後で体力的にも差ほど変わりがないと考え、みんな一緒にランニングすることにしました。

みんなで、火災現場の個人装備を着ます。

最後に空気呼吸器を背負って、トレーニングの開始です。

バリー
バリー

訓練中であるとはいえ、火災の指令が入れば直ぐに出場します。

火災現場で各人が最良のパフォーマンスを発揮しなければならないため、事前の準備がかかせまん。

例えば、準備運動を入念に行う…水分がすぐに補給できるよう体制を整える…などです。

自身の体調と向き合う


私は、中隊長でこの訓練の責任者でもあります。

みんなの体調や調子が分かるよう、最後尾でランニングをします。

先頭は、小隊長。

ペースは、ゆっくり。

会話ができるぐらいです。

はじめの5分間…

暑さを感じるというよりは、個人装備の重さに慣れる時間帯。

足腰にどれだけの負荷がかかっているのか確認しながら走ります。

次の5分間(合計タイム10分)…

みんな少し慣れてきて、和やかムード。

笑いながらお互いの調子を確かめ合っています。

「調子良さそうだな!」「いやいや、そんなことないっすよ😃」って感じです。

次の5分間(合計タイム15分)…

体は慣れている感覚だが、汗はかなり出てきている。

顔から出る汗を拭き取る仕草が目立ってきた。

バリー
バリー

汗を拭き取るといっても、タオルを持っている訳でもないので、防火服の袖で汗を拭っています。

ここで、小隊長が言う。

「階段の登り降りを始めます」

「了解」みんな答える。

消防署の屋外階段を3階まで登って、降りるを繰り返す。

歩くペースでじっくり階段を踏みしめる。

次の5分間(合計タイム20分)…

階段の登り降りは、7回くらい繰り返し終えて、ランニングに切り替える。

みんなの会話は止まった。

体温もだいぶ上がってきているのが分かる。

それぞれが自身の調子に向き合う時間帯だ。

次の5分間(合計タイム25分)…

最後尾を走る私。

走っているみんなを見ていると、少しペースを落としている隊員がいる。

私は、先頭を走る小隊長に言う。

「ここから、列を崩して各自のペースで走ろう」

小隊長が言う。

「了解。私もペースを落とします。」

それに合わせてみんなもペースを落とす。

ただ、誰ひとり列を崩そうとしない。

みんな一緒に最後まで走りたいという意志を感じる。

私も最後尾でみんなと一緒に走ることにした。

住民の声援が嬉しい


次の5分間(合計タイム30分)…

最後の5分間。

体温がかなり上昇しているのを感じる。

不快な暑さ。

みんなの顔が赤く、大量の汗をかいている。

みんなが自身の体調と向き合っている時…

「がんばれ!がんばれ!」という声が聞こえる。

子どもが声援を送ってくれていたのだ。

地元の家族が消防署の前を通るとき、消防士が火災現場の服装で走っているのを見て、足を止めてくれていたのだ。

この辛い時間帯に声援は有り難かった。

さらに何人もの人が足を止めて声援を送ってくれている。

みんなも住民に答える。

「ありがとうございます!」

声援のお陰もあって、みんな最後まで列を崩さず走ることができた。

みんながにこやかだった。

積み重ねが大切


夏を迎える前にこのトレーニングを4回から5回行います。

熱中症を防ぐためは、このトレーニングは大切です。

さらに踏み込んで話をすると…

年間を通してトレーニングすることが大切です。

最近の研究で暑熱順化トレーニングは、軽装で行っても効果があるそうです。

ということは…

消防士には、日々の有酸素運動などのトレーニングが必要になってくるということです。

ハードなトレーニングにこだわるのではなく、継続的にできるトレーニングを積み重ねることが大切です。

そうすれば、熱中症になりにくい体ができてくるはずです。

バリー
バリー

ぜひぜひ消防の世界に!

2026年度版 東京消防庁 科目別・テーマ別過去問題集(消防官1類) [ TAC出版編集部 編 ]

価格:2530円
(2025/1/11 19:27時点)
感想(0件)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA