
消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

訓練って厳しいよね?

消防士が背負う空気呼吸器はどう使うの?

訓練のエピソードが知りたいな…
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、空気呼吸器のことがざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

自分を守る保安器具
消防士が火災現場でボンベ(空気呼吸器)を背負っているのを見たことがあると思います。
このボンベの中には、圧縮された空気が入っています。
この空気を頼りに火災建物の中で活動しているのです。
火災建物の中は、熱気があり煙が充満しています。
よくドラマなどで見る場面…
「視界が開け…炎が明確に見え…倒れている人も見えて…救出してくる」
そんなことは、まずありません。
よく目にする光景が…
「煙で真っ暗で…熱気がある先にオレンジ色の炎が陽炎のように見え…逃げ遅れている人は、全く見えない」
ほぼ煙で汚染され、視界ゼロの状況なのです。
この中で一呼吸でもすれば、一酸化炭素中毒で倒れてしまうでしょう。
そのため、空気呼吸器は、消防士の身を守る重要な資器材であり、安全を保つと書いて「保安器具」と呼ばれています。
【空気呼吸器の解説】
上のリンクを開いて画像を見てください。
隊員が背負っているのがボンベです。
ボンベの中には、圧縮された空気が入っています。
この空気が吸気管(黒いホース)を伝い、面体(隊員の顔を覆うマスク)に供給され、呼吸ができるようになるのです。
また、面体の中には、常に空気が供給され続けている(陽圧の状態である)ため、面体が顔から少しズレてしまっても煙を外に追い出してくれる機構になっています。
さらにボンベ内の圧力が6㎏以下になるとベルが鳴り、残りの空気が少ないことを知らせてくれます。
《東京消防庁のボンベ》
ボンベ容量が約5Lの中に約300㎏の圧力をかけた空気が入っています。(ボンベ容量が8Lのものもありますが、今回の解説では省略します)
そのため空気量は、5×300で約1500Lになります。(実質は、1300L程度になります)
消防士の1分間の呼吸量は40Lで計算され、32分ほど使用できることになります。

空気呼吸器の重さは、約12㎏です。
体力的なことを心配する人がいますが、地道にトレーニングすれば自然と体力はついていくでしょう。
「消防士の必要な体力」について、記事を書いていますので下にリンクを貼っておきますね。

点検要領
空気呼吸器が消防士にとって重要な資器材であることを分かってもらえたでしょうか?
重要な資器材であるからこそ、毎日点検しています。
点検要領も下記のように細かく決まっています。
【空気呼吸器の点検要領】
ボンベの外観にひび割れがないか?
ボンベのそく止弁(ボンベ内の空気を供給する箇所)に損傷がないか?作動に問題がないか?
ボンベ内の圧力は、250㎏以上あるか?
連結ナット(ボンベを繋ぐナット)に損傷がないか?
中圧ホースにひび割れがないか?
圧力計のホースにひび割れがないか?
圧力計の取付け状態に問題はないか?指針の変形がないか?
プレッシャーデマンド弁(空気の圧力を調整する弁)の取付け状態に問題ないか?作動はするか?
面体の吸気管(黒のジャバラ状のホース)に亀裂がないか?
面体の取付け状態に問題がないか?
面体のガラス、呼気弁、伝声盤の取付け状態に問題はないか?

空気呼吸器の点検要領をざっくり解説しました。
目視や手で触って、しっかり確認することが大切です。
火災現場で自分の身を守るため、毎日この点検を入念に行っています。
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火災現場では呼吸量は多くなる
先ほど空気呼吸器の解説の中で…
ボンベの中には約1300Lの空気が入っていて、
隊員の呼吸量は、計算上1分間に40Lの空気を必要とするため、約32分間使用できると解説しました。
ただ、32分間、空気を保たせることは難しいでしょう。
火災建物の中での活動は、
姿勢を低く保ち(熱気が上部にあるため)…
放水圧力に耐え…
重いホースを引っ張り…
要救助者を持ち上げて救出してきます。
さらに、熱気と煙が充満している中、不安や焦りなどの感情も沸いてきます。
どうしても呼吸量が多くなるのです。
私の感覚では、1分間に60Lくらいの空気を必要とし、20分程度しか空気は保たないです。

火災建物に入って活動したエピソードがありますので、下にリンクを貼っておきます。

自らの呼吸量を知る訓練
先ほどは、私の感覚で必要な呼吸量を解説しましたが…
これには個人差があります。
そのため、消防士たちは自分の呼吸量を知る訓練を行います。
完全着装になり、呼吸器を背負い、面体を被ります。

個人装備の「完全着装」について書いた記事がありますので下にリンクを貼っておきます。

この状態でランニングをしたり…
筋力トレーニングをしたり…
重い資器材を持って歩いたりします。
その中で時間経過とともにボンベ内の圧力がどのように下がっていくか記録をします。
その記録を元に自分の呼吸量を把握するのです。

訓練だと大抵の人は、呼吸量が1分間に50L程度になります。
ただ、災害現場では、さらに負荷がかかり、60Lくらい使用する人が多くなるでしょう。
自分を守り人を助ける
消防士は、自分の身は自分で守ることが、鉄則です。
(もちろん、東京消防庁として部隊の安全対策は常に行われています)
このことからも空気呼吸器は、最も重要な資器材と言っていいでしょう。
災害現場で空気呼吸器を使う時は、間違いなく危険な場所です。
点検が重要です。
少しの異常も見逃してはいけません。
そして、自身の呼吸量を把握することも大切です。
危険な所でプレッシャーがかかると息があがってきます。
それをなるべく抑え、冷静を保ち、呼吸を安定させるのです。
訓練に励んでいけば、徐々に呼吸量も安定させることができるでしょう。
何度も言いますが…
火災建物中では、自分の身を守ることが最優先です。
それができるからこそ、人を助けることができるのです。

消防士が火災で人を助ける姿は、勇ましいです。
そこには、空気呼吸器の点検など地道な努力があるのです。
ぜひぜひ消防の世界に!
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