
消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

救助活動って何してるの?

電車の事故も対応するの?

レスキュー隊の災害エピソードが知りたいな…
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、電車の人身事故の救助活動についてざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

目次 非表示
特別救助隊員として出場
『駅ホーム、女性が電車とホームの間に挟まれた模様』
昼間、訓練中に指令が流れる。
訓練を中断し、車両に飛び乗る。
けたたましいサイレンの音を鳴らし颯爽と出場。
機関員が言う。
「〇〇駅の南口に停車します。駅員の案内があるそうです」
隊長が了解し、指示を出す。
「1人先行して、当て木を持ってきてくれ。後続で空気式マットを用意!」
【当て木の解説】
角材のことを言います。
大きい物で90㎝×30㎝程度、小さい物で30㎝×10㎝程度で、他にも様々な種類の当て木があります。
交通事故現場でよく使用するため、レスキュー車に積載されています。
要救助者が挟まれている箇所に当て木を入れて、それ以上挟まれないように使ったり、
要救助者が挟まれている箇所を広げた後、そこに当て木を入れて、狭まることを防ぐために使ったりします。
【空気式マットの解説】
ゴム製のマットに空気を入れることで膨らみます。
マットは4種類あって、40t、30t、20t、10tの重量物を持ち上げられる能力があります。(メーカーにより能力が変わります)
空気が入る前、厚さが各3㎝弱になっているため、狭い箇所に入れることができます。
空気は、消防士が火災現場で背負っている空気ボンベを使用します。
隊員は了解し、副隊長が私に指示する。
「隊長と一緒に先行してくれ」
私は了解した。
その時…
機関員が言う。
「現場に到着します」
駅前ロータリーに到着
私は、ロープと当て木を2つ持ち、隊長と現場に向かった。

レスキュー隊の副隊長について書いた記事がありますので、下にリンクを貼っておきます。

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電車とホームの間に人が…
駅改札に行くと、駅員が待っていた。
隊長が駅員に聞く。
「何番線ですか?電車の運行は止っていますか?」
駅員は答える。
「3番線ホームです。電車の運行は止っています」
隊長は了解し、事故現場に急ぐ。
3番線に通じる階段を駆け降りる。
人ごみが行く手を遮る。
声を掛けながら前に進むと、事故現場が見えてきた。
状況を確認する。
電車は止っていて、扉が開いている。
電車とホームの間に20㎝弱の空間があり、そこに女性が落ち下半身がスッポリと挟まっている。
女性は頭を打ったのか、出血し、意識がはっきりしない。
その女性が軌道敷に落ちないよう、乗客の女性が上半身を支えている。
隊長がすかさず指示する。
「女性が落ちないよう支えろ!」
私は直ぐ乗客の女性に変わり、挟まっている女性の両脇を持ち体を支える。
「頑張ってください。もうすぐここから出られます」
私はそう伝えると女性が軽くうなずく。
そして、力を込め女性を上方に引こうとしたが、下半身が完全に挟まっていて上がらない。
隊長もそれを見て、指示する。
「空気式マットで救出する」
私は了解した。
その時…
後続のレスキュー隊員と支援をするポンプ隊員が集まってきた。
電車を傾ける
隊長が副隊長に指示する。
「30tマットを要救助者の脇に設定」
さらに隊員に指示する。
「要救助者に安全帯とロープを付け、落下防止しろ」
みんな了解し、動き出す。
要救助者の両脇に安全帯を締め付け、その安全帯にロープを付けた。
そのロープをポンプ隊員が確保する。
私は、もう1人のポンプ隊員に女性の確保を交代してもらい、30tマットの設定に入る。
空気ボンベに減圧器・コントロールボックス(空気を送る装置)を付け、そこからホースを伸ばす。
ホームと電車の間に設定した30tマットにホースを繋げた。
副隊長が隊長に伝える。
「30tマット準備よし」
隊長が指示する。
「今から電車を傾ける。マットが膨らみだしたら、女性が落ちないよう確実に確保を頼む」
みんなが了解する。
さらに隊長が指示する。
「空気送れ!空気送れ!」
徐々にマットが膨らむ。
「送気やめ」
隊長がマットの設定が良いか確認する。
「マットの設定状態よし!さらに空気送れ」
30tマットが電車のボディーを押し出している。
徐々に電車が傾き出した。
1㎝…2㎝…少しずつ傾く。
副隊長が言う。
「救出できます!」
隊長が指示する。
「当て木を設定」
予めロープで結んである当て木を女性の脇に入れ込む。
隊長が指示する。
「救出するぞ!ロープはそのまま確保!」
副隊長と私で女性の両脇を支え、ゆっくりと女性を引き出す。
下半身が抜けた。
拍手が起きる
女性を救出し、救急隊に引き継ぐ。
救急隊は、女性に処置をして急いで救急車に搬送していった。
その時、拍手が起きる。
周りで救出の様子を見ていた乗客たちからだ。
みんなホッとした表情をしている。
隊長もそれに答える。
「ご協力ありがとうございました!」
さらに現場に着いた時、女性の体を支えてくれていた人にも声を掛ける。
「体を支えてくれてありがとうございました」
そう言って、深々と頭を下げた。
こうして現場を後にした。
その後、救急隊から聞いた話で女性は病院に着く頃には意識もしっかりと回復したそうだ。
嬉しさが込み上げると同時に早く社会復帰してほしいと願った。

レスキュー隊は、電車の人身事故に多く出場します。
今回のエピソードのように人命救出ができると本当に嬉しいです。
ぜひぜひ消防の世界に!
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