
消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

総合指令室って何してるの?

指令室員で女性は働いている?

多摩指令室って何?

総合指令室員の魅力って何だろう…
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、指令室員の魅力がざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

通報内容から部隊を出場させる
この記事は東京消防庁の話になります。
私は、指令室員になったことはありませんが、総合指令室と多摩指令室の両方を見学に行き、勉強させてもらった機会があります。
あとは、消防署で指令室員経験者と話してきた経験を踏まえて記事を書いていきます。

総合指令室は、東京23区内の119番通報を受信するところで、千代田区の「災害救急情報センター」にあります。
多摩指令室は、東京多摩地区内の119番通報を受信するところで、立川市の「災害救急情報センター」にあります。
どちらも業務内容は同じです。
さて、指令室員の任務は、119番通報をしてきた人の話を聞き、そこに部隊を出場させることです。
火災通報の応答の一例は以下のとおりです。
指令室員「消防庁、火事ですか?救急ですか?」
通報者「火事です」
指令室員「何が燃えていますか?」
通報者「住宅が燃えています」
指令室員「そこは何区何町何丁目何番何号ですか?」
通報者「〇〇区〇〇3丁目12番12号です」
指令室員「目標になる物はありますか?」
通報者「〇〇クリニックの隣です」
指令室員「分かりました。消防車向かいます」
こういった短い時間の応答で部隊を出場させます。
指令室員はこの会話の中で、あらゆる情報や指令システムを駆使して、消防部隊を出場させる準備をしています。
次にその内容を黄色マーカーで表記します。
指令室員「消防庁、火事ですか?救急ですか?」
通報者「火事です」
⇒通報者からの電話番号からシステムの地図上に大まかな位置が表示されるのを確認しています。
指令室員「何が燃えていますか?」
通報者「住宅が燃えています」
⇒建物が燃えていることから、必要な部隊数を考慮しています。
指令室員「そこは何区何町何丁目何番何号ですか?」
通報者「〇〇区〇〇3丁目12番12号です」
⇒火災が発生している場所の近隣消防署に「火災の電話が入っていること」を自動音声で知らせます。

「火災の電話が入っていること」を消防署に知らせることを「予告指令」と言います。
「予告指令」を聞いた部隊は、防火衣などの個人装備を着て、出場に備えることができます。
指令室員「目標になる物はありますか?」
通報者「〇〇クリニックの隣です」
⇒場所を特定し、出場部隊を決定します。
指令室員「分かりました。消防車向かいます」
⇒出場する部隊がある消防署に出場指令を流します。
このように通報者と会話が終わりしだい、部隊の出場指令を流します。
部隊は、予告指令で火災の通報が入っていることを聞いていますので、素早く出場することができます。
指令室は、一刻でも早く部隊を火災現場に向かわせるため、無駄のない対応をしているのです。
階級によるバックアップ体制
119番通報を受信する職員は、基本的に消防副士長や消防士長たちです。
そのバックアップで消防司令補の職員が複数名いて、119番通報の会話を聞いています。
その内容から
災害の実態はどの程度か…
部隊を向かわせる場所に間違いがないか…
不足する部隊はないか…
専門部隊を出場させる必要がないか…
様々な視点でチェックを行い、必要であれば助言したり、支援したりします。
さらにその助言や支援が間違っていないか、最終的に消防司令がチェックします。
二重三重のバックアップ体制の上、消防部隊を災害現場に向かわせているのです。

階級について書いた記事がありますので、下にリンクを貼っておきます。

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抜擢された人たち
指令室員になりたい人も東京消防庁の採用試験に合格して、消防学校に入学し、消防署に配属される必要があります。
消防署に配属されてからは、ポンプ隊になり2~3年の現場経験を重ねていくことになります。
ここからは個人の選択で庁内資格を取得していくことになります。
ただ、この時点では、指令室員になることはできないでしょう。
庁内資格を取得して、その専門分野である程度の経験を経てから、指令室員に抜擢されることがあります。
指令室は、災害実態を把握し部隊出場させる訳ですから、経験や専門的な知識が必要とされるからです。

指令室員経験者の話を聞いていると、消防署に配属されてから8年程度の経験してから指令室に異動することが多いそうです。
特に消防署の指揮隊で活躍している人を抜擢する傾向があります。
女性職員も抜擢される人が多いです。


エマージェンシーコール対応のやりがい
指令室員は、本当に大変な仕事です。
慌てた通報者を落ちつかせて、その会話から災害実態を掴まなければなりません。
例えば…
「人が倒れている」という通報でもあらゆる災害の可能性を疑って、出場部隊を考えなければなりません。
具合が悪くなった人なのか?
⇒救急車だけの出場でいいだろう。
ケガをした人なのか?
⇒交通事故であれば、救急車だけではなく警察官の要請も必要だろう。
車の下敷きになっている人なのか?
⇒救出活動が必要だから、特別救助隊やポンプ隊の出場も必要だろう。
酸欠状態や化学薬品を吸ってしまった人なのか?
⇒化学災害の可能性があるから、化学機動中隊やハイパーレスキュー隊の専門部隊が必要だろう。
このように様々な判断をしなければなりません。
さらに出場した部隊からの無線で災害現場の状況を聞き、さらに必要な部隊を考えて出場させます。

自らの判断で部隊を出場させたことで、その災害の被害が最小限に終息することができると本当に嬉しいそうです。
また、応急処置が必要な人に対して、処置をするよう促すこともあります。
【通報者に対して応急処置を促す一例】
「意識があるの確認してください」
「うつ伏せになっているのであれば、仰向けにしてください」
「呼吸があるか、確認してください」
「心臓マッサージをしてください」
「1秒に1回のリズムで心臓マッサージをしてください」
※スマートホンのカメラを使用したライブ119を使う場合もあります。
このように救急隊が到着するまで、通報電話は切らずに応急処置を促していきます。
指令室員も一緒になって、倒れている人を救命していくのです。

指令室員経験者の人が、通報者に救急処置を促して、男性を救命した経験を聞いたことがあります。
緊迫した電話のやりとりの中、通報者と一緒になって男性を助けらたことを嬉しそうに話していました。
指令室員は、消防組織にとって災害対応の最重要ポストです。
通報者のエマージェンシーコールに耳を傾け、
どんな災害なのか?
この災害にはどのような危険が潜んでいるか?
どうすれば人を救命することができるか?
どの部隊を向かわせたらいいか?
常に判断が求められます。
本当に気が抜けない大変な仕事です。
ただ、自らの判断で災害現場の被害を最小限に抑えることができた時のやりがいは、言葉にできないくらい嬉しいでしょう。
指令室員を目標に消防士になることも選択肢の一つだと思います。

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