
消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

消防士は災害でどんな行動をするの?

災害活動はやりがいがありますか?

燃えている建物に入るのは怖いよね?

火災現場のエピソードが聞きたいな…
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、「火災現場のエピソード」から消防士のやりがいがざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

消防士なりたての火災出場
消防学校を卒業して、
消防署に配属されてから2ヶ月後…
早朝4時の指令。
「住宅1階出火」
仮眠室のベットから飛び起きる。
車庫まで走るが、寝起きで思考が停止している。
防火ズボンを履き、防火服を着ているとき…
ようやく覚醒してきた。
車両に飛び乗る。
出場途上に小隊長が指示する。
「現場は近い。着いたら中継体形で行くぞ!」
「了解!」
《中継体形について解説》
ポンプ車2台が配置されている消防署では、ポンプ車2台で連携して水を出します。
先行して現場の間近まで行くポンプ車を先行隊と言います。
先行隊は、タンク水が備わっているため、消火栓から水を吸わなくても一時的に放水することができます。
タンク水は、1000ℓから2000ℓしか入っていないため、放水が数分しか持ちません。
そのため、後続するポンプ車が消火栓から水を吸い上げて、先行隊に水を送ります。
このようにポンプ車2台が連携して水を送る体形を「中継体形」と言います。
※この記事のエピソードで私は、後続するポンプ車で出場しています。
機関員(運転手)が言う。
「間もなく消火栓に着きます!」
火災現場に到着
この消火栓は、火災現場まで100mの位置。
100m先に先行隊が見える。
先輩が車両からホースカーを降ろす。

ホースカーとは、ホースが14本~15本積まれてある小型の車です。
「電動で走るもの」と「人力で走らせるもの」があります。
私は、ホースの先端を消防車に繋ぎ、
ライトやロープを持ってホースカーの後ろを走る。
火災建物の前に到着した。
古い2階建ての住宅だ。
焦げ臭ささを感じるが炎は見えない。
隊長がお年寄りの男性に付き添い、指示する。
「逃げ遅れはいない。建物の中は煙が充満しているようだ。ホースを持って火元を探してくれ!」
「了解!」
みんなで建物の中に入る準備をする。

燃えている建物の中に入るときは、必ずホース(筒先)とライトが必要になります。
煙だけのときも同様です。
いきなり火炎が噴き出したりするときに備えるためです。
また、長さ30mのロープを隊員に繋ぎます。
「空気呼吸器の空気量が少なくなったとき」や「緊急の事態」にこのロープを伝って退出するためです。
空気呼吸器の面体を着け、
小隊長と先輩と私の3人で建物の中に入っていった。
![]() | 価格:4290円 |

煙で視界がない
玄関を開けるとうすい煙が漂っていた。
まずは、1階を確認する。
リビング、台所、水回り…
火が見えない。
「おかしい…」
先輩がつぶやく。
小隊長が指示する。
「2階に行くぞ!」
階段を登っていく。
煙が次第に濃くなっていくのを感じる。
2階に着くときには、煙で視界が遮られていた。
ライトを照らして、ようやく50㎝先が見える程度だ。
不安な感情が沸いてくる。
廊下から居室のドアを開けると…
さらに濃い煙が吹き出してくる。
すかさず小隊長が言う。
「放水するぞ!」
筒先から勢いよく放水される。
ただ、炎が見えない。
おかしい…何が起きているんだ。
2階の熱気に恐怖を感じる
小隊長が一旦放水を止めて、状況を確認する。
その時、頭に強い熱気を感じる…
ヘルメットが熱気にさらされているのに気がついた。
視界は煙で遮られ、頭の上は熱気が充満。
この状況に恐怖を感じた。
すかさず小隊長が言う。
「天井裏が燃えている!天井を破壊するぞ!」
一度階段付近まで下がり、外で待つ中隊長に応援を求める。
「中隊長!天井裏が燃えています。とび口を持ってきてください!」
その時…
特別救助隊が到着した。
中隊長が特別救助隊長に指示する。
「2階の天井が燃えている。とび口で天井を破壊して放水してくれ!」

とび口は、木の柄の先端に槍のような金具が付いています。
長さが1.5m~2.5mくらいで様々な長さのとび口があります
その後、特別救助隊員が3名がとび口を持って、2階に駆け付ける。
とび口で天井を差し、引き抜くと天井材が剥がれ落ちた。
天井がオレンジ色に染まっていた。
正に火の海だ。
小隊長が放水する。
放水した水が火の勢いで水蒸気に変わる。
真っ白い煙が居室内に広がっていった。
小隊長が指示する。
「窓を開放しろ!」
窓を開放すると水蒸気の煙が屋外に出ていった。
天井を見上げると火が消えていた。

この火災原因は、2階天井裏の電気配線からの出火であるとされました。
古い家ではネズミが配線をかじったり、雨漏りで劣化した配線がショートしたりして、天井裏から出火することがあります。
経験を積むことの大切さ
この活動を振り返ると…
私は、2階で煙りが充満している中、頭上で熱気を感じ、恐怖という感情に襲われていた。
どうしようもできなかった。
何か行動に移せるほどの選択肢を持ち合わせていなかったのだ。
なぜ小隊長は天井裏が燃えていると判断できたのか?
後から聞いたが…小隊長は昔、
「天井裏から火が回り、思わぬところから火が噴き出してきたことがある」
と経験談を話してくれた。
命からがら逃げてきたそうだ。
そういった経験があったからこそ、先ほどの現場で対応ができたのだ。
あのまま、煙と熱気の原因が分からず放置していたら、
私たちは、突然火炎にあおられていたし、家全体も燃えてしまっていただろう。
小隊長の適切な判断が被害を最小限に止めたのだ。
やはり経験に優るものはない。
消防士なりたてにこの経験を積むことができて、
また一歩、成長する自分を実感することができた。

火災現場で危なかったことは、語り継がれていきます。
組織としても危険情報は共有され、教養なども行って事故が起きないよう努められています。
ぜひぜひ消防の世界に!
![]() | 2026年度版 東京消防庁 科目別・テーマ別過去問題集(消防官1類) [ TAC出版編集部 編 ] 価格:2530円 |
