火災エピソード④《寝たきりの男性を救え》

学生
学生

消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

転職考え中
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火災建物から人を助ける行動を知りたいな?

学生
学生

火災で人を助けたエピソードが聞きたいな…

と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?

この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。

最後まで読んでいただけたら、火災現場で人を助ける行動がざっくり分かると思います。

ちなみに私は、

バリー
バリー

消防士は「やりがい」があって最高!

プライベートも充実させてくれて感謝!

って想っている幸せものです。

消防士になりたい興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

レスキュー隊員として出場


「住宅出火。逃げ遅れある模様」

昼間の火災指令。

完全着装してレスキュー車に飛び乗る。

颯爽と出場。

車内で機関員が言う。

「現場近くの道は、かなり狭いです」

隊長が了解し、指示する。

ポンプ隊の水利部署に邪魔にならないように気をつけてくれ」

バリー
バリー

水利部署とは、ポンプ車が消火栓や防火水槽の間近に停車することを言います。

そうすることで、ポンプで水を吸いあげ火災現場に水を送ることができます。

レスキュー車にはポンプ機能がないため、ポンプ車の水利部署を妨げないようにする必要があります。



機関員が言う。

「現場近くの道は水利が何個かあるので、大通り上に停車しますが、現場まで距離があります。」

隊長と隊員は了解した。

その時…

先に現場に着いたポンプ隊から無線が届く。

「住宅2階から白煙。延焼中」

車内でさらに緊迫した空気が流れる。

さらに無線で追加の情報が入る。

「逃げ遅れ1名ある模様」

隊長が隊員に指示する。

「人命検索最優先で行くぞ」

隊員みんなが了解した。

機関員が言う。

「このあたりで停車します。現場は、左に入って300mほど先です」

火災現場付近に到着

全員が車両から降り、隊長が指示する。

「隊員一人が先行し、エンジンカッター携行。後続は、三連はしご、投光器搬送!」

隊員みんなが了解した。


現場は細い路地の先


私は、エンジンカッターを持って隊長と先行することになった。

火災現場までは、約300m。

その方向を見ても煙は確認できない。

先に着いている部隊からの情報では、2階延焼中で逃げ遅れが1名いるみたいだ。

急がなければ!

隊長に必死に付いていこうと懸命に走るが、差がどんどん離されていく。

現場付近に来ると、煙の臭気があり、住民が助けを求める声が聞こえてきた。

細い路地の先を通過すると、火災建物が見えてくる。

火災建物前に到着


私は状況を把握する。

2階建ての住宅で2階の窓から白煙が噴出…

靴を履いていない女性が路上でうずくまる…

先着のポンプ隊がホースを伸ばしている途中…

火災建物に放水はされていない…

玄関ドアは開いている…

隊長は先着の中隊長のもとに向かっている…

一刻を争う状況だ。

バリー
バリー

中隊長について書いた記事がありますので、下にリンクを貼っておきます。

消防署の中隊長とは?《経験から解説》

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2階に男性がいるとの情報


隊長が先着の中隊長に接触し、情報を聞いている。

私も耳を傾ける。

「火災建物から逃げてきた妻からの情報で、2階に旦那が寝たきりで生活している。避難できていない。

隊長が私に指示する。

「後続の隊員に逃げ遅れ情報を伝えて進入準備しろ」

私は了解した。

隊長は、火災建物から逃げてきた女性のもとに向かう。

その時…

後続の隊員とホースを延長してきたポンプ小隊長が到着した。

私は伝える。

「居住者からの情報で2階に逃げ遅れ1名」

みんな了解した。

レスキュー隊3名とポンプ小隊長1名で進入準備をする。

空気呼吸器の面体を被り…

投光器、検索ロープ(命綱)、ホース1線を用意した。

その時…

隊長が火災建物から逃げてきた女性のもとから戻ってきた。

「男性は、普段2階のベランダ側の部屋で寝ている。重点的に探せ」

みんなが了解するとともに進入した。

1階は白煙が漂う。

階段を発見し確認すると…

2階からの白煙が流れ出ている。

やはり火点は2階だ。

ホース(筒先)を持つポンプ小隊長を先頭にして、2階に上がる。

私たちレスキュー隊員も水が通っているホースを2階に押し上げる。

ポンプ小隊長が2階に到着し、私たちに言う。

「ホースをあと3m押し上げてくれ」

私たちはレスキュー隊員は了解し、ホースを押し上げる。

ポンプの小隊長が言う。

「よし!ホース充分!」

これで2階火点への放水体勢を整えた。

私たちも急いで2階に上がる。

情報の大切さ


2階に到着すると煙で視界がまったくない。

熱気も感じる。

男性はどこにいる…一瞬考える。

レスキュー隊長が言ったことを思い出す。

「ベランダ側の部屋だ」

視界がない中、方向感覚を研ぎ澄ます。

進入した玄関が南側で、2階のベランダも南側だ…

階段はストレートだったから、今は北側にいる。

背面の方角がベランダ側だ。

進入方向が定まり一歩、一歩進んでいく。

3mくらい進んだところで、熱気を強く感じた。

炎が立ち上がっている。

そして、その隣にベットを発見した。

すかさずベットに手を伸ばす。

柔らかい何かを掴んだ。

逃げ遅れた男性の足だ。

ポンプの小隊長とレスキュー隊員に伝え、男性をすぐさま抱きかかえる。

私が胸部側、もう一人が足を持ち搬送を開始した。

階段を下ると玄関先で隊長が待っている。

隊長が指示する。

「救急隊が着ているから、引き継ぐぞ」

面体を脱ぎ、男性を救急隊のストレッチャーに収容した。

救急隊はすぐさま救急車に収容して病院へと出発した。

その後、ポンプ小隊長の放水により、火災は鎮圧した。

救急搬送された男性の予後(助かったかどうか)は知らされなかった。

この現場をふり返ると…

煙で視界がない中、逃げ遅れた人を迅速に救出できたのは、「逃げ遅れた人の情報」を掴んだからだ。

隊長が火災建物に居住する女性から男性がいる場所を具体的に聞き出してくれた情報

これがみんなに伝わり、方向感覚を失うことなく男性までたどり着けたのだ。

冷静な隊長の情報収集が功を奏した現場だった。

バリー
バリー

火災現場で逃げ遅れた人を救出できると、今まで一生懸命訓練してきたことが報われます。

モチベーションもあがり、消防士になって良かったと感じることができます。

ぜひぜひ消防の世界に!

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