
消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

救助活動は何をしてるの?

川の事故も出場するの?

水難救助隊は災害現場で何をするのだろう?

レスキュー隊の災害エピソードが知りたいな…
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、特別救助隊と水難救助隊が連携した救助活動がざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

特別救助隊員として出場
『橋の上からの飛び降り、姿が見えない』
22時頃、指令が流れる。
ライフジャケットを着ながらレスキュー車に乗り込んだ。
けたたましいサイレンの音で颯爽と出場。
車内で隊長が言う。
「水難救助隊と連携して活動しよう」
みんな了解する。
副隊長が言う。
「隊長、はしごクレーン救出の準備もしておきます」
隊長が言う。
「頼んだ!」
その言葉にみんなが了解する。
そして、機関員がまもなく現場に到着することを知らせた。
救助活動現場に到着
橋の上では、人混みの中、警察官が2人が立っている。
隊長が警察官に情報を聞きに行く。
私たちは川をのぞき込む。
10m下が水面になっていて、
真っ暗で何も見えない。
私がライトで照らす。
飛び降りた人の姿は見えない。
川の流れは、かなりゆっくりに見える。

特別救助隊は、水の中の活動はできません。
ライフジャケットを着るのは、陸で活動していて誤って川に転落してしまうことを想定した安全対策になります。
橋から飛び降りた目撃情報多数
警察官と話していた隊長が戻ってきた。
「この橋から女性が飛び込んだ。目撃情報が複数あるから間違いない」
私は、水面をライトで照らすも人は見えないこと、川の流れがゆっくりであることを隊長に報告する。
隊長が了解する。
その時…
消防艇のサイレンの音が聞こえる。
水難救助隊だ。
橋の下で何度か旋回している。
レスキュー隊長が水難救助隊長を無線で呼び出す。
「この場所から女性が飛び降りた。目撃多数」
水難救助隊長が答える。
「了解。流れを考えて下流5mの場所で環状検索を実施する」
特別救助隊長が答える。
「救急隊もこの橋に来るから、ここから要救助者を引揚げる準備をする」
水難救助隊長が答える。
「了解。お願いします。」
特別救助隊長が隊員に指示する。
「水難救助隊が水中検索している間、はしごクレーン救出の準備をする」
隊員は了解し、作業に移った。

はしごクレーン救出とは、低い場所から高い場所に人を救出する時、三連はしごに滑車を2個付けて、そこにロープを通し、クレーンのように引揚げる救出方法を言います。
特別救助隊がよく使用する救出方法です。
三連はしごについて書いた記事がありますので下にリンクを貼っておきます。

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水難救助隊の環状検索
水難救助隊員4名が、消防艇から川に飛び込んだ。
水面に浮き上がり、隊員同士が異常がないか確認している。
4名とも親指を立てた。
水難救助隊長が指示する。
「検索開始!」
救助救助隊員4名が水中に潜り、姿が見えなくなった。
そこには、ブイ(浮き)が残り、水面が泡立っている。

水難救助隊が行う水中検索は、主に2つあります。
この記事の現場では、環状検索という方法です。
水中検索について書いた記事がありますので、下にリンクを貼っておきます。

静かな時間が流れる。
聞こえるのは、消防艇のエンジン音だけだ。
「早く見つけてほしい…」
1分…2分…時間が経過する。
「要救助者は、もっと流されてしまったのか…」
「水中の環境が悪くてなかなか発見できないのか…」
不安な気持ちがわき上がる。
その時…
水面がさらに泡立つ。
隊員4名が水面にあがってきた。
「要救助者、発見!」
暗くてよく見えないが、隊員が女性を抱えているようだ。
「さすが水難救助隊!よく見つけてくれた!」
みんながそう思った。
水難救助隊は、すぐさまフローティング担架に女性を収容した。

フローティング担架は、担架の周りに「浮き」が付いていて、要救助者を収容しても沈まない構造になっています。
はしごクレーン救出
特別救助隊は、はしごクレーン救出の準備を完了させ、水難救助隊の活動を見守っていた。
そこに「要救助者、発見!」の知らせ。
即行動する。
三連はしごを立て、倒れないようにロープで橋の欄干に結ぶ。
三連はしごの固定が完了する。
続いて、救助ロープを水面に浮かぶ水難救助隊の元に降ろしていく。
特別救助隊長が指示する。
「救助ロープ降下!」
「ロープゆるめ!ロープゆるめ!」
「あと1mで到着する…停止!」
「救助ロープ到着!」
水難救助隊員のもとにロープが届く。
フローティング担架と救助ロープをカラビナで繋ぐ。
水難救助隊員がOKの合図を出した。
特別救助隊長が指示する。
「救出用意!ロープゆっくり引け!」
「確保!点検」
特別救助隊員は、はしごクレーンの設定が間違っていないか、カラビナやロープの結びに問題がないか点検する…
水難救助隊員は、フローティング担架のバンドやカラビナに問題がないか点検する。
「点検よし」
特別救助隊員と水難救助隊員が親指を立てる。
隊長が指示する。
「救出はじめ!ロープ引け!」
フローティング担架が3m…5m…8mと順調に揚がってくる。
「ロープ引け!ロープ引け!」
特別救助隊長の指示が響き渡る。
欄干の下からフローティング担架が見えてきた。
もう少しだ。
さらに隊長が指示する。
「ロープゆっくり引け!引け!引け!確保!」
フローティング担架が橋に引き込める高さまで揚がった。
特別救助隊長が指示する。
「担架確保!」
応援に駆け付けたポンプ隊員二人が担架を握った。
それを隊長が確認すると、橋にフローティング担架を入れ込むため、ロープをゆるめさせる。
「ロープゆるめ!ロープゆるめ!」
フローティング担架が橋に無事到着した。
救出完了だ。
助かってほしい
橋上に救出した瞬間…
救急隊が駆け付ける。
すぐさま心臓マッサージが行われる。
それと平行してフローティング担架から救急隊のストレッチャーに収容した。
急いで救急車に乗せると間髪入れず病院に出発した。
救出してから、あっと言う間の救急隊の活動だった。
水面を見ると水難救助隊が撤収作業が完了している。
特別救助隊長が水難救助隊長を無線で呼び出す。
「救急隊は出発しました。連携ありがとうございました」
水難救助隊長も答える。
「お疲れ様でした」
水難救助隊員は私たちに敬礼して帰って行った。
私たちも撤収作業を始める。
ただ、救出した女性が気がかりだ。
厳しい状況であることは分かっているが…みんな気持ちは一緒だ。
「助かってほしい…」
そう願い帰路についた。
救出した女性の予後は、病院から知らされなかった。
通報があってから、救出まで50分程度は掛かっているため、救命はできなかったと推測される。
今回の現場は、水難救助隊と連携した活動になった。
水難救助隊の水中検索は洗練されている。
川の水質は悪く、視界はほとんどない状況だったが迅速に発見してくれた。
プロの活動を見せてもらった。
私たち特別救助隊も、もっと訓練を重ね精進していかなければならないと感じさせてくれる現場だった。

特別救助隊は、専門部隊である水難救助隊とよく連携しています。
他の専門部隊と連携することもありますので、またエピソードを紹介します。
待っていてください。
ぜひぜひ消防の世界に!
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