
消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

消防士が救急現場に行くって本当?

救急現場って大変かな?

消防士も救急処置をするの?

救急現場のエピソードを聞きたいな…
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、救急現場のエピソードから消防士のやりがいがざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

消防士も救急現場へ
救急車の要請は増える一方です。
救急車を呼んでも、近くの消防署の救急車がすでに出場してしまっていることがあります。
その対策で、近くの消防署の消防車(ポンプ車)が救急現場に行きます。
消防車で来る消防士は、消防学校の教育で救急訓練を受けています。(救急車に乗れる資格を持っている場合もあります。)
救急隊が到着するまで、できる範囲で応急処置をするのです。
《東京消防庁・消防車(ポンプ車)の人員の解説》
ポンプ車には、4名から5名が乗車しています。
4名乗車の場合は…主に2パターン
〔1パターン〕
・中隊長
・小隊長
・隊員
・機関員(運転手)
〔2パターン〕
・小隊長
・隊員
・隊員
・機関員(運転手)
5名乗車の場合は…
・中隊長
・小隊長
・隊員
・隊員
・機関員(運転手)

基本的にこのような人員で救急現場に出場します。
機関員(運転手)は車両に残りますので、応急処置に当たるメンバーは、3名から4名です。
今回のエピソードは、4名乗車で黄色ラインのパターンで出場しています。
出場から2分で救急現場に到着
消防学校を卒業して、消防士になったばかりの頃のエピソードです。
「高齢男性、餅をのどに詰まらせ苦しがっているもの」
という指令で消防車(ポンプ車)で出場。
救急現場までは、約1㎞の距離。
2分程度で着く場所です。
近くの消防署の救急車は別の現場に出場中であるため
他の救急車が到着するまでに10分程度かかります。
この状況の中…
救急現場に到着
道路で家族の女性が手招いている。
かなり慌てている様子だ。
家の中に入ると…
リビングテーブルの脇で高齢男性が倒れている。
呼びかけても反応がない…
先輩が高齢男性の観察に入る。
「隊長、CPA(心肺停止状態)です」
隊長が、CPR(心肺蘇生法)を指示する。
先輩は、すぐさま心臓マッサージを開始し、
私は、救急資器材のバッグマスクを用意する。

バッグマスクは、「鼻と口を覆うマスク」と「片手で操作できるバッグ(袋状)」が一体になっています。
バッグを握ることで、マスクに空気が送られ、更には急病人の肺に空気を送ることができます。
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餅を喉につまらせて倒れたばかり
隊長が家族の人から、情報を聞き出す。
「男性は倒れてから2分程度、それまでは、椅子に座った状態で苦しんでいた。」
この情報から男性が心肺停止になって
2分程度しか経っていないことが分かる。
心肺蘇生の合間に口の中を見ても、餅は見えない。
救急隊が到着するまで心肺蘇生をするしかない。
「1!2!3!4!5!………」
先輩の心臓マッサージの声が響く。
私は、この声に合わせてバッグマスクで空気を送る。
これをひたすら繰り返す。
高齢男性に回復の兆しはあらわれない…
心肺蘇生を始めてから、5分ぐらいが経過した。
救急隊はまだ着かない。
おそらく、あと2.3分で着くだろう。
その2.3分が果てしなく長く感じる。
「早く、早く来てくれ!」
心の中で叫んでいた。
助けたい想い
隊長は家族に
「脈と呼吸がない状態で、消防士が心肺蘇生をしている。救急隊が着くまでにもう少し時間がかかる。」
という内容を説明している。
家族も状況が少しずつ分かってきて、悲しい感情が沸いてきている様子だ。
「お父さん、頑張って!」
涙目で呼びかける…
先輩と私は、淡々と心肺蘇生を続ける。
みんな想いは一緒だ。
「助けたい、助かってほしい!」
ただ、感情的にならないよう冷静を保つ。
先輩の心臓マッサージの声を聞き逃さないよう…
バッグマスクで適正な空気量を送れるよう集中する。
冷静に…冷静に…消防学校で教わった通りに…
その時、サイレンの音が聞こえてきた。
救急車のサイレンの音だ。
救急隊員が駆け付ける。
救急隊は、吸引器を準備し、
喉に詰まっている餅を取り出すとともに
除細動器で電気ショックを行う。
手際がいい。
先輩と私は、心肺蘇生を続けながら
高齢男性をストレッチャーに収容して、
救急車の中まで搬送した。
病院に向けて出発する救急車を見送る。
「どうか助かってほしい…」
《救急道具の解説》
・ 吸引器
⇒ 細い管(ホース)から口の中の異物や体液などを吸引する道具で、救急車に配置されている。
・ 除細動器
⇒ 心臓がけいれんし、血液を流す機能が失われた状態に「電気ショック」を与えて、心臓の正常なリズムを戻すための道具。エピソード当時は、救急車にのみ配置されていた。現在は、消防車にも配置されている。
・ ストレッチャー
⇒ 車輪が着いている担架。急病人を乗せて移動ができ、そのまま救急車に収容できる。
消防学校の基礎教育に感謝
救急隊から聞いた話だと高齢男性は、救急車の中で呼吸と脈拍が回復したそうだ。
救急病院の医師に引き継ぐ時には、意識も徐々に回復していたらしい。
率直に嬉しかった。
一緒に現場で活動した先輩や隊長も喜んでいた。
この救急現場は、私が初めて経験した心肺停止の現場だった。
その時を振り返ってみると意外にも冷静に行動ができたと思う。
というのも、この現場と「ほぼ同じ現場を想定した訓練」を消防学校で受けていたのだ。
消防学校の教官は口癖のように言っていた。
「訓練は、本番のように。本番は訓練のように。」
「訓練は、実際の救急現場のように想像を膨らまして行動する。実際の救急現場は、訓練でやってきたように行動する。」という意味だ。
正にその通りになった。
この教えのお陰で冷静に行動することができた。
訓練をしっかり受けていて良かった…
心から感じた現場でした。

消防士も救急現場に行って、応急処置をするとは意外だったのではないでしょうか?
消防士は、消防学校で救急訓練を受けています。
救急訓練を受けていると、プライベートで家族や友人の具合が悪くなった時も対応ができます。
消防士の魅力の一つですよね。
ぜひぜひ消防の世界に!
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