救急隊との連携エピソード①《印刷機に挟まれた人を救え》

学生
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消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

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消防士は災害現場でどんな行動をしているの?

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災害現場で救急隊も活動するの?

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消防士と救急隊が一緒に活動しているエピソードが聞きたいな…

と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?

この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。

最後まで読んでいただけたら、災害現場では消防士と救急隊が連携して活動していることがざっくり分かると思います。

ちなみに私は、

バリー
バリー

消防士は「やりがい」があって最高!

プライベートも充実させてくれて感謝!

って想っている幸せものです。

消防士になりたい興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。

レスキュー隊員として救助活動現場へ


『作業所の印刷機に男性が手を挟まれた模様』

夕食中に指令が流れる。

箸を置き、車両に駆け込んだ。

出場途上、車の中で隊長が指示する。

「第一に印刷機の電源を遮断、第二に印刷機の分解、第三に印刷機ローラーの切断

私たち隊員は、「了解」と答える。

バリー
バリー

印刷機などの機械に人が挟まってしまった時、はじめにすることが電源の遮断です。

電源が入っていると救出作業中に機械が動き出してしまったり、感電してしまう危険があるためです。

その次は、機械の分解で救出することを試みます。状況を見て分解が不可能であれば、挟まれている箇所の切断・破壊を試みることになるのです。

現場に着くまで、使用する道具の担当を決めた。

救助活動現場に到着

すでに指揮隊とポンプ隊が到着していた。

救急隊はまだ来ていない。

レスキュー隊長が大隊長に駆け足で近づいていく。

私たち隊員は、空気式のこぎりを準備し、隊長の指示を待つことにした。

バリー
バリー

指揮隊とは、大隊長が乗る車です。大隊長について、書いた記事がありますので下にリンクを貼っておきます。

空気式のこぎりとは、圧縮された空気を動力源にした「のこぎり」です。空気を送ることで、先端の「のこぎり」の刃が高速で動く仕組みになっています。木材、鉄、アルミなど様々なものを切断することができます。

消防署の大隊長とは?《経験から解説》

レスキュー隊長が指示する。

「車内で言った通りの行動でいくぞ!」

私たちは「了解」し、隊長の後に続く。

作業所内に入ると…

印刷機が3台ほどある作業所だ。

奧の印刷機を見ると、作業員の男性が険しい顔をしている。

ポンプ隊の隊長がレスキュー隊長に言う。

「印刷機の電源は落としました。作業員の右手が挟まっています」

レスキュー隊長は、「了解」し、詳細に状況を確認する。

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印刷機のローラーに手が挟まっている


印刷機は、大きなポスターなどを印刷できるもので、大型だ。

作業員は、印刷機の調子が悪く、点検中に右手が巻き込まれてしまったようだ。

印刷機には紙を送り出すローラーが上下に付いている。

ローラーの直径は10㎝くらいで幅が2mくらい。

ローラーとローラーの隙間は、1㎜くらい

その隙間に右手が巻き込まれている。

レスキュー隊長が指示する。

「ローラーが取り外せないか確認してくれ!」

隊員たちは「了解」し、ローラーの両端の取付け部分を確認する。

レスキュー隊長は、作業所の責任者と話す。

「この印刷機のローラーの外し方分かりますか?メンテナンス業者がいるのであれば、電話をして私と通話させてください」

作業所の責任者は「了解」し、メンテナンス業者を調べている。

私たち隊員は、ローラーの両端を確認するが、外せそうにない。

レスキュー隊長も一緒に確認するが、首を横に振る。

その時、作業所の責任者が話す。

「メンテナンス業者に電話はつながりません。すいません」

その話を聞き、隊長が指示する。

ローラーの軸を空気式のこぎりで切断する

隊員たちは、「了解」し、準備にとりかかる。

その間に救急隊が到着した。

救急隊の的確な対応



レスキュー隊長が救急隊長と話す。

「ローラーの軸を切断します。切断中に振動があるので、男性のケアをお願いします」

救急隊長は「了解」し、作業員の観察をする。

名前や年齢を聞きながら、意識と呼吸を確認…

事故に遭った際の状況を聞き、頭部や頸椎を痛めていないか確認…

男性の左手で脈拍、血圧、酸素飽和度を計測…

右手の挟まれ具合を見て、出血量を確認…

救急隊長が救急隊員に指示する。

「毛布で保温、酸素を投与、体勢が苦しそうだからベルトで体重を支えよう」

的確な指示に救急隊員は了解した。

さらにレスキュー隊が作業するところが見えないようシートを張り、安心感を与えている。

そして、作業員に丁寧に説明していく。

出血は、ほぼ止まっていること…

今からレスキュー隊がローラーの軸を切り、挟まれた部分を広げること…

ローラーの軸を切断中に振動があること…

具合が悪くなったら、言ってほしいこと…

救急隊長がレスキュー隊長に言う。

「ローラーの切断作業をはじめて大丈夫です。」

レスキュー隊長が言う。

「了解!何かあったら作業を中断しますので言ってください」

ローラー軸の切断に集中



私たち隊員は、空気式のこぎりの準備が完了した。

私は、隊長と一緒に切断箇所を確認する。

ローラー軸の根元に狙いを定める。

はじめに切り込みを入れていく。

ゆっくり空気式のこぎりの刃を動かした。

ザッザッ、ザッザッ、ザッザッ

ローラー軸に少し切れ目が入る。

レスキュー隊長が救急隊長を見る。

救急隊長はOKのサインを出した。

私は、空気式のこぎりの切断刃が高速に動くように調整する。

ザッザッザッザッ、ザッザッザッザッ、ザッザッザッザッ、ザッザッザッザッ、ザッザッザッザッ

ローラー軸が削れていく。

ローラー軸は、かなり固い。

切断まで時間がかかりそうだ。

その時、作業員の男性のうめき声が聞こえる。

切断を中止し、救急隊長を見る。

救急隊長は、作業員の男性に話しかけ、励ましている。

「体勢を少し変えますか?楽な体勢はありますか?」

作業員の男性も少し体勢を変える。

すかさず救急隊も作業員が楽になるよう印刷機と体の間に毛布を入れたり、体を支えるベルトの位置を変えたりしている。

救急隊長がレスキュー隊長にOKのサインを出した。

私も「早く楽にしてあげたい」一心でローラー軸の切断に集中する。

救急隊は心強い



ローラー軸の切断開始から約10分が経過した…

あと少しで切断できる。

レスキュー隊長が切断作業の中断を指示した。

私は、切断を止める。

レスキュー隊長が救急隊長に言う。

「まもなく切断が完了します。ローラー軸が切れたときに反動がありますので、男性のケアをお願いします」

救急隊長が作業員を励ます。

「もうすぐ切断できます。頑張りましょう!」

レスキュー隊長はその言葉を聞いて、切断作業開始の合図をした。

私は、空気式のこぎりを低速に切り替え、切断を開始する。

ザッザッ、ザッザッ、ザッザッ、バキッ!

ローラー軸が切断された。

ローラー軸にバールを差し込み浮かせる。

その浮いた間隙にくさびを入れた…

救急隊長が言う。

「救出できる!OK!」

救急隊長は、慎重に男性の右手を引き抜く。

副子や三角巾を使って、手際よく右手を覆った。

すぐさま救急車に収容して、病院に出発する。

3分も経たないうちに救急処置をし、病院に出発する…

手際のよさに「本当のプロ」だと感じた。

救助活動が終了し、指揮隊・ポンプ隊・レスキュー隊は、消防署に戻った。

後日、病院の医師から手紙が届いた。

作業員の男性を処置した医師からだ。

「病院に運ばれてきた時、男性の右手は損傷が激しかったです。ただ、出血が少なかったことや神経があまり切れていなかったことが幸いして、手術は成功しています。リハビリに時間がかかると思いますが、機能回復ができると信じています。これも消防隊の皆さまが懸命に、そして慎重に救出していただいた結果だと思います。ありがとうございます。」

という内容だった。

医師から手紙をいただくのは初めてのことだったので、非常に驚いた。

同時に男性を救出できたことに誇りを感じた。

あの救出活動を思い返すとやはり救急隊の存在は大きい。

男性のケアを全て任せ、レスキュー隊はローラー軸の切断に集中することができた。

救出した後の救急隊の動きは、「早く医師の元へ!」という強い意志を感じた。

部隊活動の違いがあるけれども、「人を助けたい」という気持ちはいつも一緒だと再認識できた。

バリー
バリー

救助活動現場では、救急隊と連携して活動することが必須です。

救急隊は、傷病者の社会復帰を視野に救出方法の助言もしてくれます。

本当に頼りになる人たちです。

救急隊と連携して、人を助け、その人が社会復帰したことを聞けると本当に嬉しいし、モチベーションが上がります。

消防士になって良かったと思えます!

ぜひぜひ消防の世界に!

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